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続々・番外編「別れの時」

2006年09月12日 22:15


父は、ゆっくりと話し始めた。

今まで見たことの無いほど、表情は暗く沈んでいる。

「私が、まだ若い頃の話だ、父の後を継ぎ、王となったばかりの私に、
 早速大臣達が急かして来た仕事があった。」

父の瞳がますます、曇っていくのを不安げに見ていると、そっと頭をなでてくれた。

「イースのことは、知っているかな?」

「えーっと、確か、とても強い魔力を持った
 魔法師達が住んでいた場所のことだったような?」

「うん、そうだよ。 その地に住まう魔法師達の多くが宮殿に勤めていたんだ。」


「しかし、そのことが原因で、大臣達は強く彼らを疑った。」


強すぎる力を持った、彼らが、いつ自分達に刃を向けるのか・・・。


ならば、いっそこちらが先に手を下そう・・・と、私を急かした。

「私は、大臣達の意見を聞いた、そして、確かにそうかも知れないと、思ってしまった。」

やがて、私は、大臣達の言葉に従い、
イースの人々に、ありもしない濡れ衣を着せ、

・・・襲撃させた。

「そんな!何かの間違いですわっ!!
 イースの虐殺を、お父様が実行させたなんて・・・!」

「これは、嘘でも間違いでもない、真実だよ。
 私が、『イースの虐殺事件』の首謀者だ。」

※『イースの虐殺事件』とは・・・、大臣達が画策し、ありもしない噂を
町中に流したのが事の発端である。
 「イースは、国家転覆を企て、危険な魔道実験を行っている」
この噂が、宮殿内にも囁かれ、イース出身の魔導師達も、やがて投獄される。
 それを受け、王が命を出したのが「イース魔法師の捕獲」である。

捕獲とは、名ばかりで、実際はイースが焼け野原になるほどの惨事であった。

大臣達の企ては、見事に成功し、自分達の地位を守り。
王は、自身のしてしまった罪を嘆いた。

これが、イースの虐殺と呼ばれる、事件の真実。

「今、このことをなぜ話したのかと言えば・・・。

 ・・・・奈央、どうか泣かないで・・・・

こんな形で真実を告げる私を、許してくれとは言わない・・。

私は、王として父として失格だな・・・、
   辛いかも知れないが、聞いてほしい。」

やせ細った、父の体は、微かに震えている。

「カフェル・O・レインは、イースの生き残りだ。」

ハッと、父の顔を見つめた、しかしその瞳は揺らぐことなく、奈央を見ていた。

嘘だと、父を攻め立てた、そんなはずがないと、服の袖を引っ張った。

けれど、父は首を横に振る、それが真実なのだと、言い聞かせるように。


涙が、枯れ果てるのではないかと思うほどに、泣き崩れた。


寂しくて、悔しくて、切なくて、泣いているのか分からないほどに・・・。


その時だ、部屋の片隅から、パチパチと拍手の音が聞こえた。

「お別れの挨拶は、御済ですか?陛下。」

父の表情は、時折差し込む、月の光で見えたが、
その表情は先ほどまでの表情とは違い、怒りに震えている。

「レイン・・・、やはり来たか・・・。
 この子に罪は無い、私がすべて・・・」

「覚悟は出来ている、ということですか・・。」

レインの言葉の節々には、憎しみが込められていたし、
その表情にはもう、いつもの笑顔はない。

「やめてっ!レイン、お父様に罪はないわっ!!悪いのは大臣達じゃない!!!」

私は、夢中でレインに駆け寄り、掴み掛った。

「えぇ、確かに、貴方の父上だけが悪い・・
という訳ではないので、既に手は打ちました。」

「ぇ?」

思わず、私は、後ろへ下がった。
確かに私には、いつもの様に微笑みかけてはいるが
なにかが、違うのだ、あの笑顔と、かけ離れた何かが・・。

後ろに壁など、無いはずなのに、ポンと何かにぶつかった。

驚いて振り向くと、そこには、憔悴しきったファームが立っていた。

「レイン、残った大臣達は彼が始末する、とのことです。」

いつもの、おどおどと怯えた様子など微塵も感じなかった。
それどころか、良く見れば、服のあちこちが、返り血で赤々と染まっている。

「ファーム・・貴方、何をしたの!?レイン一体何が起こって・・・。」

私はその日、初めてレインを見て、怯えた。
 ただただ、恐ろしくて、レインをまともに見ていることが出来なかった。
その場にへたりと座り込んでしまった、私に見向きもせず、
父の方へとゆっくりと歩み始める。

その瞳にはもう、何も映らない。

その口から発せられる言葉に、なんの意味も無い。

その心の乾きを満たすのは、復讐か?


父はベットから這い上がり、レインを見つめ続けている、
私の位置からはもう表情はわからなかった。

「イースの虐殺に関わった、大臣達は、
それぞれ無残な死に方をしているでしょうね。
 貴方は、特別ですから、じっくり時間を掛けて殺すことにしたんです。」

「この病が、そなたの復讐の始まりか・・・。」

「気づいていただけて、何よりです。」

ふっと、口元だけが微笑んだ。レインを軽蔑するかのように、睨み据える王。

「貴方には、とっておきの最後を用意したんですよ。」

スッと、レインが右手を床へ向けると1本の剣が現れる。

「この剣で自害していただきたい・・・と思っているんですが、
私に切りかかって来てくださっても構いませんよ?」

弱りきった、王になにができるのかと、試しているのだ。

「私に、選べというのか・・?」

道化のようにペコリとお辞儀をするレインに、怒りがこみ上げて来たのか、
王は剣を、引き抜いて、切りかかった。

「私に、剣を渡したことを後悔するがいいっ!!」

懐へ飛び込み、確実に胴を切り裂いたはずだった。

しかし、倒れたのは、王の方だった。

痛烈な痛みに耐えかね、激しく咳き込み、指の合間からは血の雫が滴り落ちた。

「お父様!!!」

思わず駆け寄ろうとした私を、ファームが掴んで止めた。

「今、そばに行くと、バラバラになるから、大人しくここに居て。」

ファームに掴まれた腕を必死に振り払おうとしたが、
思った以上に力が込められていて振り払うことが出来なかった。

「奈央・・、来てはいけない・・・。」

弱々しく、微笑む父が、痛々しかった。


「やれやれ、お涙頂戴の演劇か、なにかか?」

なんとも、間の悪いというか、場の空気を読めない存在が、ズカズカと入り込んできた。

「その大事な舞台の邪魔をするのは、誰かな・・。」

レインが振り返りもせず、そういうと、
全身真っ赤なローブに大剣を携えた人物が、肩をすくめた。

「おー、コワイコワイ、逆らわない方が無難だと思うぜ、お姫さん。」

なんとも、無粋な人間だ。
はっきり言って、この空間には、あまりに似つかわしくない人物である。

「大臣達は、どうしたんですか?」

ファームが気にすることなく聞いた。

「全員、片付いたから、こうしてここへ来たんだろうがー。」

相変わらず、レインは見向きもしなかったが、既に、
王への復讐心も興味もないようにすら感じる。

髪の毛をぐっと掴むと、無理やり顔を上げさせていた。

「あなたには、失望しました。
もう少し殺しがいがあれば良かったのですが、残念です。
 奈央様に、なにか別れの言葉があるのであれば、今のうちですよ。」

パッと手を離して、距離をとると、何かを考えているような仕草を見せた。

ファームが手を離したので、すかさず父の元へと駆け寄った。

よく見れば、全身に小さな傷跡がちらほら見えた。

「奈央・・、私はもう、助からない。
 お前は、ルスタと一緒に、この国を出なさい。
和国ならば、丁重に守ってくれるはずだ。」

ぎゅっと、抱きしめて首を横へ振った。

「お父様を、見殺しになんてしません!必ず、必ず助けて見せます。」

ポンポンと優しく、背中をなでてくれる父は、いつもの優しい父だった。


「いいねぇ・・、泣けてきちゃうねぇ。
お姫さんの為に、王を生かしておいていいんじゃねぇの?」

レインに、問いかける赤ローブからは、到底泣いているとは思えなかったが。

「彼の意見に、完全・・とまではいきませんが、賛成です。」

と言うのはファームだ。

「やれやれ・・、すっかり奈央様に感化されたようだ・・。」

「レイン・・・、お父様を助けてくれたら、なんでもするわ。」

父王を庇う様に、立つ奈央さまにはもう、恐れはなかった。

「だめだ・・奈央っ!約束など、守るわけが・・・。」

「陛下は、黙っていてください、貴方の命はもう、奈央様の手の上です。」


迷いは微塵も無かった、父を守るためなら、何だってする。

「レイン、私は貴方に従います。だから、父からは手を引いて。」

レインが、満足そうに笑った。
まるで、最初から、そうなることを望んでいたように・・・。


・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・

この日、王は、奈央様に、王位を譲り、姉のルスタ共々、
城をでて、遠征にある小さな古城に移された。

生涯、父と奈央様は、二度と会うことができなくなった。

唯一許されたのは、手紙のみ。

もし、会えば、呪いにによって、父は命を落とすこととなった。


これが、レインの計画の発端であることを知るのは、ごくわずかな存在のみだ。


                                 
                                番外編 ~別れの時~ 終わり                             



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