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第一記  『始まりの守護者』 追記

2006年09月04日 11:08

「それで・・、どうかね? 私は、この子が適任だと思うのだが。」

長椅子に深く腰掛け、微笑みながら、現王が守護者に問いかけた。
 守護者は考え深げに、私を見つめながら腕組みをしていた。

「んー・・、悪くはないと思うが・・・、他にいい奴がいないなら、
 こいつでも構わないが・・・・、なにかあっても、俺は干渉できないぞ。」

最後のセリフが、嫌に引っかかった。

「一体、何の話なのですか? まったく話が読めないのですが・・。」

現王が、珍しく深いため息をついた後、決心したように語り始めた。

「ケファルの谷は、知っているかね?」

「ケファルの谷というと・・、現在、少数部族同士が対立している所ですよね?」

「いかにも、そのため現在は進入できないようになっているのだが・・。」

「ケファルには、入れるんだが・・その先の集落には結界が
 張ってあって近づけないようになってるんだ。」

「そばまで行ったのか!?よく無事だったな・・。」

思わず関心してしまったが、本人は別段どうでもよさそうだった。

「ともかく本題に入ろう、実を言えば、そこに真の王がいるそうだ。」

「なっ!!? なぜそのような場所に!」

「まぁ、落ち着きなさい・・、その子がそういうのだから、まず間違いはないことだ。
 真の王は、少数部族の生まれで、今まさに、命の危機に瀕しているとのこと・・・。」

「ならば!一刻も早く兵を、ケファルの谷へ向かわせれば・・・!」

「さっきも言ったが、結界が張ってあるんだよ。そんなに大勢で行って、
 部族を煽ってどうする? そのせいで、王の死が早まるなんてことになりかねないだろ。」

「しかしっ!」

「憤るのも分かるがなぁ・・、こればかりは、慎重に行かねばならんのだよ・・、
 ゆえにそなたを呼んだのだ、卿一人で、ケファルへ赴き、王を保護してほしいのだ。」

急な話が多すぎて、理解力と冷静さがどこかへ飛んでいってしまって、
 私の思考は追いつかなくなっていた。 

理解はできないが、現王は私に、大変な任を与えようとしていることはわかる、
 信頼と期待を裏切ることは、私にはできない。


しばし、思い沈黙の中、私の心は少しずつ冷静さを取り戻していた。

「わかりました。ですが、なぜ私一人で行かなくては、ならないのですか?」

そういいながら、守護者を見つめた。

「ぁー、悪いが、俺は行けない・・というか入れないんだ。
 結界に踏み込んで単身、王を助けに行こうと思ったんだが・・拒まれてな。
 だからこうして、老王を頼りに来たのさ。」

――まぁ・・他にも理由は、あるんだが―――


スッと、守護者が手を差し出してきた、その手の中には、淡い光を放つ指輪があった。

「これは?」

疑問に思いながらも、私はそれを受け取った。

「結界に感知されない指輪、王が近くにいることを知らせてくれる便利な代物だ。」

「そんな、便利な物を、私に託してくれるのか?」

「まだ、お前を認めたわけじゃぁないが・・、必要なものだろう?」

やさしいところもあるのだと、なんだか嬉しかったが、気がつけば、
彼女が、部屋を出て行こうとしているではないか。
 私は思わず呼び止めた。

「待ってくれ!どこへ行くんだ!」

「俺のするべきことは済んだからな、ここは俺には居づらい場所だ・・。
 それに・・・・、真の王と新たな契約を結んでいる訳じゃないからな・・・・。
 お前は、今やるべきことに集中しろ、話はその後だろ?」

にやりと不敵に微笑んで、颯爽と出て行ってしまった。

「しまった!名前を聞いていなかった・・。」

「ほっほっ、心配せんでも、わしが聞いておるよ。
 天秤座のクロセルお嬢さんだ、残念ながら歳は聞けんかったが。」

満面の笑みでそう答える、王は、いつになく楽しそうだった。

                                   

                       第一記 『始まりの守護者』   終わり



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