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第ニ記 『ケファルの谷』

2006年09月04日 11:09

巨大なこの谷は、元は大平原で、大地震の時亀裂ができたのち
 女神が心を痛め、涙を流し大量の水が谷を駆け巡り、
やがて緩やかな小川が流れ、今の谷を作り上げたのだとか・・・。

なにやらこじつけのような気もするが、事実、今の谷には小川が流れている。

谷の入り口には門番が1人ぼーっと立っている。
 その少し奥に、2匹の巨大な獣の彫刻が左右に立っている。
さらにその奥から、左右に分かれた道が見える。


私はなぜだか急に、その門番とはかかわりたくないと思い。

完全無視を決め込み、走り抜けることにした。

が・・しかし、さすがの門番も気がついたのか止めに掛かってくる。

「ちょっ!コラッ!!なに人のこと無視して走りぬけようとしてる・・ってまてって!」

止まることなく抜けようとしたが、無理なようだ・・。

「チッ」

「おいコラ、今舌打ちしたろっ!無視すんなってーの」

私は、深いため息を吐いて、手刀でもかまそうかと考えはじめた。

「・・・」

「今あんた、物騒なこと考えてたろ・・って剣すでに抜いてるし!!
 危ないってっ! しまえって!!」

ますます、私はイライラしているわけだが・・、さてどうしたものか・・・。

などと考えこむ振りをして、門番のみぞおちに膝蹴りを見事に決める。

「出番・・短っ・・・!」

どさりと地面に倒れるのを見届けてから、2匹の像へと近づく。

谷に侵入してからずっと誰かに睨まれていると感じていたが・・、どうやら

この2匹の像が私を睨みつけているようだ。


動くはずがないと、自分に言い聞かせるように慎重に通り過ぎる、

無事通り過ぎほっとしたのもつかの間のことだった。


突風が私の左右を吹き抜けた、思わず目を瞑ったが、身を守るために剣に手をかけた。

「剣を収めよ・・さもなくば我らの牙がそなたの身に襲いかかろうぞ。」

低くうなるような声が、容赦なく私を押さえつけようとしている。

けれど、ここで立ち止まる訳にも行かない・・・私は見据えた、2匹の獣を。


全身を赤き炎で身にまとい、朱の瞳で見下ろすのは、左の獣。

全身に風を身にまとい、緑の瞳で見下ろすのは、右の獣。

 右の獣が、吠え立てる。
「何用か!この地は貴様のような人間が近づくことも許されぬ、神の地ぞ!」

 私は、正直に答えた方が良いと判断した、嘘が死を招きかねないと・・。
「私は、フルグラーム、アルタミリア王の頼みで、真の王を救いに来たのだ。」

双方の獣が驚き、一瞬たじろいだが、目だけは私を逃がさんと見つめている。

「真の王だと・・・、この地に本当に王が居られると言うのか!」

「我らをだまそうと言うのではなかろうな。」

二対の獣が私の周囲を回り始める、疑うように・・・確かめるように。

「証拠ならばここにある。守護者が私に託した、この指輪がなによりの証拠!」

指輪を握り締める拳に力が入る。
 獣に知らしめるために言いはしたが、
  本当にこの指輪で王がわかるのかどうか、確証などない。


           獣に食われたくはない・・・。


恐れと不安が私を襲うが、それを振り切るように、私は指輪を天に掲げた。

すると・・、指輪が深く静かな水面の様に蒼く輝き始めた。

やがて、蒼い光は道を指し示すかのように、一筋の光となって、

ケファルの谷の左側へと続く道を指し示した。


気がつけば、二匹の獣は、元の位置へと戻り岩と同化し始めていた。

2匹の獣が、最後に告げた。

  「認めよう、お前がこの地を訪れたのも運命・・・、
          そなたに大地と風の恵みの有らん事を。」


私は、不思議なものに守られていることを、確かに感じながら歩み始めた。

その指には、今は、淡く赤い光を称える指輪をはめて。

恐れと不安はもうない、王と守護者が託してくれたのだから。


                                     『ケファルの谷』より



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