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第ニ記 『ケファルの谷』 ~アスタ族~

2006年09月04日 11:10

左側の谷に住まうのは、アスタ族という種族だ。

アルタミリア人とは髪の色と肌の色は似通っているが、
 その衣服や目の色で、アスタ族と見て分かる。

特徴的なのはその瞳の色だ、銅より少し赤みのある色である。(赤銅とも言う)

風の神、ファウェルを信仰しているのは有名であるが、それゆえに、
 大鷲を神のみ使いと信じている。

近年では、首都との交流もあったためか、服装もかなり変わってきている
 他にも色々と便利になったようだが、右の谷に住まう、タタル族との争いの為
  その交流も途絶えたわけなのだが・・・。

集落はかなりの高低さがあり、段々畑のようになっており。
 (といったほうが分かりやすいはず)

谷を丸く削り進入路を入り口のみとしているため攻めにくい、谷の上から攻撃すれば・・

と、思うかもしれないが、上層部は風が強く立つこともままならないからだ。

集落の真ん中を走るように、滝が流れ川ができている為、作物を育てることが可能なのだ。


家は木造だ、どこからそんな大木がと思うかもしれないが、
 滝の裏側に、隠し通路がありその先に、大森林につながる道があるのだ。
(ありがちな話だが・・・)

ちなみに高床式だ、ねずみが多いからな。

「ネズミが多いってのは、余計じゃないか?」

「うぉっ!!なんだおっさん!どっから来たんだよ!」

相当驚いたようで、乗っていた木箱から転げ落ちそうになる少年だった。

『おっさん』と呼ばれたことに、腹が立ったので助けるのは止めておこうと決めるのは、
フルグラーム卿だった。
 
「あっぶねぇー!落ちるとこだったじゃないかっ!」

なんとか体制を立て直し木箱に座りなおし、ブツブツ文句を言いながら
睨みつけている少年をほって置いて、フルグラームは質問した。

「熱心に書いていたのは、この集落についてのことのようだが・・・・、
 君はこの谷の出身だろ?なぜ書き記す必要があるんだ?」

「おっさんには、関係ないねっ!」

再び、「おっさん」と呼ぶこの少年を
 殴り倒そうかと思い始めたが、別のことを聞くことにしようと口を開きかけたが、
唐突に少年が、自分の腕を引っ張って「隠れろ!」と叫んだ。

訳も分からなかったが、素直に従うことにした。
 少年の顔からは、恐怖が浮かび上がっている、一体何に怯えているのだろうか。

その理由もすぐに分かることとなった。

積み上げられた木箱の影から路地を見れば、黒いもやのようなものが
突然姿を現したかと思うと、本来の姿を形作り始めた。

見かけは狼か犬のようだったが、その目と牙は血で染まったかのような真紅に彩られ、
真っ黒な体に良く映えるが、不気味に辺りを見回す姿は、獲物を探しているようだ。
 
その鋭い両足の爪に捕らわれればひとたまりもないだろう、
 恐怖を感じるのは、そこではなかった、下半身から実体がないのだ!

後ろ足が実体化しないままなのを不快に思いながら、
小声で少年に聞いた。

「あれは、一体なんなんだ・・。」

「・・・・あれはガルム・・・地獄の野良犬共さ。」

最後は、はき捨てるように言い捨てたのを聞きつつ、
 ガルムから目を離すことができなくなった。

「まずいな・・・、このままここにいても見つかるかもしれない。」

そう言ったのは、間違いではなさそうだ、何かを嗅ぎ付けたのか、
 次第にガルムの数が、増し始めていた。

「仕方がない、家に隠れよう、ここよりはまぁ、安全なはずだし。
 一つだけおっさんに確認、もし気づかれても逃げきる自信はあるかい?」

にやりと笑う少年に答えるかのように、フルグラームは、不敵に微笑んだ。

「あぁ、あんな犬共に捕まったりはしないさ。」

 二人は、気づかれることなく、その場を離れた。


集落を襲うガルムは、どうやらまだ序の口のようだった。
 少年の家で、打ち解けて話も弾む。
色々な、話を聞くことができた。

ガルムが現れた為に、集落に残っているのは、若い男達と族長そして自分だけだと、
 大森林に年寄りや女子供が非難し、長が道を結界で閉ざしたことも聞くことができたし、

タタル族の方がもっと深刻な状態だということも・・。

「ガルムの数は増えるばかり、原因もわからないからな・・・、対処のしようがないのさ」

「君は、こんな危険な所になぜ残ったんだ?」

そればかりが気になって仕方がなかった。

「タタルの連中がこの事態を引き起こしたわけじゃないと思うんだ。」

「どういうことだ?」

少し迷った様子で、少年が話し始めた。

「俺、見たんだ・・・。タタルの長の息子が、『ララト』が黒いでかい塊に襲われるのを!
 それからさ、ガルムが現れ始めたのは・・・。」

「黒い塊か・・・、ララトがその後どうなったかは・・?」

「わかんないよ・・、慌てて逃げてきたからな。」

少年は申し訳なさそうな顔をしていたが、重要なのは黒い塊の方だろう・・。
 ララトという青年が無事ならそれに越したことはないが・・・・。

長い沈黙が部屋を包んでいた、数時間前に出してくれた、温かいミルクも
 冷め切ってしまったようだ。
先に沈黙を破ったのは、少年の方だった。

「そういえば・・、お互い名前も知らなかったな。」

「あぁ!忘れていたよ、エルド・フルグラームだ、まだ23だ。
 おっさんと言われたくはないな。」

「相当根に持ってるな・・・、俺はレーヴィル14だ。」

レーヴィルはまだ笑っていたが、気にするときりがなさそうだ。

「レーヴィルは、少しアスタ族と姿が違うようだな。」

フルグラームの素朴な疑問に、少し表情が曇ったが、レーヴィルは答えた。

「まぁなー・・、俺はアルタミリアとアスタのハーフなんだ。
 そのせいとまでは言わないが、中々なじめないな。」

複雑な表情をうかべるレーヴィルに、親近感が沸いていた。
 ガルヴィナの実家では、いつも一人だったし、周りにいたのは大人ばかりだった。

窮屈な思いをしていたことを思い出していたが、レーヴィルと同じ気持ちかどうかは
言い出しにくかった。

不意に、指輪が白く輝いていることに気がついたが、レーヴィルは気づいていないようだった。

「レーヴィル、指輪が光っているんだが。」

「は?指輪?光なんか放ってないって。」

冗談か?などと笑い飛ばされてしまった・・・。

レーヴィルには指輪が、光って見えないようだった。
また、クロセルにだまされているのではと思ったが、
今は谷に起きていることに集中するべきだと自身に言い聞かせた。


「レーヴィル、折り入って頼みがあるんだ。」

少し嫌そうな顔をしていたが、聞いてくれそうだった。

「タタル族の集落へ案内してくれないか?抜け道にも詳しいんだろう?」

途端に険しい表情を浮かべる、レーヴィルだったが、観念したように

「エルド一人じゃ、頼りないしなー、わかったよ一緒に行ってやるよ。」

なんとも頼もしい答えだ、そう思いながらも顔は始終笑いっぱなしだった。

 
 タタルの集落で、命の危機が訪れようとは、私達には知るよしもなかった。

                                      
                              『ケファルの谷』~アスタ族~ より  



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